解体工事を行う際に発生するコンクリートのがれきなどの産業廃棄物は、適切な方法で処分しなければなりません。そこで重要になるのが「マニフェスト制度」です。無用なトラブルを発生させないためには、施主としてマニフェストをきちんと確認しておく必要があります。
この記事では、マニフェスト制度や具体的な流れ、違反した場合のペナルティー、施主が確認すべき項目について詳しく解説します。トラブルなく工事を進めたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
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解体工事におけるマニフェストとは?
マニフェストは、解体工事を行う上で必要不可欠なものです。過去に悪質な業者による不法投棄が問題になったことから、防止する目的で1997年に廃棄物処理法が改正されて義務付けられたのが「マニフェスト制度」です。マニフェスト(産業廃棄物管理票)は、解体工事で発生した産業廃棄物が適正に運搬して処分されたかどうかを確認できる書類になります。誰がいつ、どのような廃棄物をどれだけ排出したかなどが記載されています。産業廃棄物を処分する場合、排出事業者は必ずマニフェストを発行する義務があります。マニフェストにおける排出事業者は、解体工事による廃棄物は業者が出したゴミという考え方が当てはまるため、施主ではなく、解体業者になります。万が一、業者がマニフェストを発行していない場合は、不法投棄の可能性があるので注意が必要です。(参考:公益社団法人全国産業廃棄物連合会)
マニフェスト票の詳しい項目
■A票
排出事業者の控えとして使用
■B1票
処分業者への運搬が終了した後に、運搬業者が控えとして使用
■B2票
処分業者への運搬が終了した後に、運搬業者から排出事業者に返送され、排出事業者が運搬の終了を確認するために使用
■C1票
処分が終了した後に、処分業者が控えとして使用
■C2票
処分業者から運搬業者に返送されて、運搬業者が処分の終了を確認するために使用
■D票
処分が終了した後に、処分業者から排出事業者に返送され、排出事業者が処分終了を確認するのに使用
■E票
最終処分が終了した後に、処分業者から排出事業者に返送され、排出事業者が最終処分の終了を確認するために使用
マニフェストの具体的な流れ
マニフェストは基本的に、排出事業者(解体業者)、廃棄物を処分する中間処理業者、最終処分場の間で受け渡しされます。どのような流れで進められるのか具体的に見ていきましょう。
マニフェストに必須事項を記入する
排出事業者は以下の必須事項をマニフェスト伝票に記入します。
- 交付年月日
- 交付番号
- 排出事業者名
- 廃棄物の種類
- 数量
- 収集運搬業者名
- 処分業者名 など
排出事業者から収集運搬業者へ渡す
排出事業者はA票を控えとして手元に残しておき、残りの6枚(B1・B2・C1・C2・D・E票)を収集運搬業者へ渡します。
収集運搬業者から中間処理業者へ渡す
収集運搬業者は、控えとしてB1票を手元に残して、B2票は排出事業者へ運搬完了の報告のために返送します。残りの4枚(C1・C2・D・E票)は、中間処理業者へ渡します。
中間処理を行う
産業廃棄物はすぐに埋め立てて最終処分するわけではなく、リサイクルしやすいように分別して焼却や粉砕などの中間処理を行う必要があります。中間処理業者は処理完了後、保管用としてC1票を手元に残して、C2票は収集運搬業者へ、D票は排出事業者へ返送します。E票は最終処分が完了するまで、中間処理業者が保管します。
最終処分を行う
最終処分業者は処分が完了次第、中間処理業者へ報告します。中間処理業者は、E票を排出事業者へ返送します。すべての処理が完了した段階で、排出事業者のもとにあるのは、A・B2・D・E票の4枚になります。
マニフェストの返送期限
マニフェストは重要な書類になるため、下記のとおり、排出事業者へ返送する期限が定められています。
- B2票(運搬完了)・D票(処分終了):交付日から90日以内(特別管理産業廃棄物は60日以内)
- E票(最終処分終了):交付日から180日以内
特別管理産業廃棄物に該当するものは、廃油や燃え殻、汚泥などになります。それぞれの伝票ごとに十分な返送期限が設けられていますが、万が一決められた期限内に返送されず、廃棄物の処分状況を確認できない場合は、排出事業者が都道府県や自治体に報告しなければいけません。また、マニフェストは5年間の保存が義務付けられています。
マニフェストの種類
マニフェストは大きく分けて「紙媒体のマニフェスト」と「電子マニフェスト」の2種類があり、どちらを使っても問題ありません。それぞれの違いを確認しておきましょう。
紙媒体のマニフェスト
従来からある紙の伝票で、A・B1・B2・C1・C2・D・E票の7枚綴りの複写式(カーボン式)になっています。排出事業者・収集運搬業者・処分業者の間で同じ情報を共有でき、廃棄物と一緒に引き渡して使います。専用伝票を購入して記入するのみになるので、電子マニフェストのように導入する手間やコストがかかりません。廃棄物の排出頻度が少ない業者で利用される場合が多いでしょう。
電子マニフェスト
情報を電子化し、情報処理センターを介したネットワークでやり取りする方法で、利用する場合は電子マニフェストシステム(JWNET)への加入とシステム利用料が必要です。2021年時点で電子化率は72%となっており、活用が広がっています。電子マニフェストは、リアルタイムで状況を把握できるなどのさまざまなメリットがありますが、利用するメリットについてはあとの項目で詳しく解説します。(参考:電子マニフェストの仕組み、電子マニフェスト登録件数及び電子化率)
マニフェスト制度に違反するとどうなる?
マニフェストを交付しない、必要事項を記載していない、虚偽の記載をしている、適切に保存していないなどのマニフェスト制度に違反した排出事業者および処理業者は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金を支払わなくてはいけません。施主が罰せられるわけではありませんが、トラブルを避けるならマニフェストの交付や記載を適切にしてくれる業者を選びましょう。(参考:措置命令と罰則)
マニフェストが不要な2つのケース
産業廃棄物を処分するためにはマニフェストの発行が義務付けられていますが、例外として不要になるケースが2つあります。業者にマニフェストのコピーを渡してほしいと依頼した際に、渡せない理由が以下のケースであれば安心できるでしょう。
1. 施工業者が最終処分まで行う
施工業者が最終処分まで行う場合、マニフェストの発行は不要です。マニフェストは産業廃棄物の運搬や処分の過程を記録するものになるので、施工業者が運搬から処分、最終処分までを行う資格・許可を持っていて、車両・施設も保有している場合は、解体工事から処分まで1社ですべて対応できるため、マニフェストを発行する義務が発生しないのです。
2. 施工業者が廃棄物の保管場所を持っている
施工業者が廃棄物の保管場所を持っている場合も、マニフェストの発行は必要ありません。業者の中には、廃棄物を工事のたびに処分せず保管場所に置いておき、まとめて処分する場合があります。どの工事で出た廃棄物か把握することは難しいため、保管場所を持っている業者はマニフェストの発行が不要になります。
電子マニフェストのメリットとは?
ここからは、電子マニフェストを利用するメリットについて解説します。主に5つありますので、それぞれ把握しておきましょう。
事務処理の効率化ができる
まずメリットとして挙げられるのは、事務処理の効率化です。紙媒体のマニフェストの場合、記入や受け渡し、保管などの手間がかかります。発行するマニフェストが多いほど、作業が負担になるでしょう。その点、電子マニフェストなら、情報を入力するだけで済みます。紙を使用しない分、環境に配慮できるメリットもあります。
データの信頼度が高まる
電子マニフェストは情報処理センターを介して情報を確認・監視ができるので、不適切な登録や書き換えなどの不正があればすぐに発覚する仕組みになっています。紙媒体よりもデータの信頼度が高いと言えるでしょう。
リアルタイムでのやりとりが可能になる
紙媒体の場合、伝票が届くまで処分の状況を確認できないデメリットがありますが、電子マニフェストはネットワークでやり取りするため、リアルタイムで状況を把握できます。
誤字脱字などのミスが少なくなる
電子マニフェストは情報を簡単に入力できる上、システム上で必須項目を管理している仕様なので、紙媒体に比べて、誤字脱字や記入漏れのミスが発生しにくいメリットがあります。
産業廃棄物管理票交付等状況報告が不要になる
紙媒体のマニフェストを発行した排出事業者は、前年度1年間のマニフェストの発行状況を「産業廃棄物管理票交付等状況報告書」にまとめて、排出事業場の所在地を管轄する行政に提出する義務があります。電子マニフェストなら情報処理センターがまとめて行ってくれるので作業が省けます。
施主がマニフェストを確認すべき理由
解体工事に伴って排出される産業廃棄物は、排出事業者である解体業者が適正に処分しなければならず、処分する際は排出事業者の責任でマニフェストの発行を行う必要があります。しかし中には不法投棄などを行う悪徳業者が存在するため、マニフェストのコピーをもらい、不審な点はないか施主として確認しておくことが重要です。実際にどこに注目して確認すべきかは、次の項目で詳しく解説します。
施主が確認すべき項目
施主が確認するマニフェストは「E票(最終処分終了)」になりますが、具体的に何を確認すればいいのでしょうか。主に3つ項目がありますので、それぞれ理解しておきましょう。
品目や住所に間違いはないか
人為的なミスで間違って記入していたり、未記入だったりする可能性があるため、品目や数量、業者の住所などを確認しておくことが大切です。
マニフェストがきちんと返送されているか
マニフェストの具体的な流れでもお伝えしたとおり、産業廃棄物が適正に処理されたあとは決められた期限内に、A・B2・D・E票の4枚が排出事業者(解体業者)のもとに返送されます。きちんと返送されているか確認して、マニフェストのコピーを渡してもらうよう依頼しましょう。
マニフェストと契約内容に相違がないか
マニフェストに記載された内容と解体工事の契約内容に相違がないか、突き合わせて確認することが重要です。辻褄が合わない場合、廃棄物を実際よりも多い量で契約しておき、少ない量で処分して差額を懐に入れているなどの可能性があるので注意しましょう。
こんな業者は注意!
産業廃棄物を適切に処分してくれない業者を見極めるポイントは、主に3つあります。当てはまる業者には依頼しない方が良いでしょう。
マニフェストのコピーを渡してくれない
法律上は排出事業者(解体業者)が施主にマニフェストのコピーを渡す義務はありませんが、優良業者であれば渡してくれるのが一般的です。もし応じてくれない場合は、マニフェストを発行していないなどが考えられるため、注意が必要です。工事を依頼する前に、マニフェストのコピーをもらえるか確認しておくと安心です。
不審な点を指摘してもきちんと説明をしてくれない
マニフェストの日付が読み取れない、受領印やサインがない、契約内容と違うなどの不審な点を指摘しても、きちんと説明してくれない業者は、不正に処分している可能性があるので気を付けましょう。
偽物のマニフェストを渡してくる
業者の中には、ほかの工事で発行したマニフェストを書き換えて渡すなどの不正行為を行う悪徳業者が存在します。少しでも不審な点があれば、マニフェストに記載されている収集運搬業者・処理業者・最終処分場に確認すると良いでしょう。記入している日付で処理されていなかったり、存在しない架空業者だったりする場合は、偽物の伝票である可能性が高いので注意が必要です。
まとめ
マニフェスト制度とは、不法投棄を防止する目的で義務付けられた制度で、解体工事で発生した産業廃棄物を処分するためには、排出事業者である解体業者がマニフェストを発行しなければいけません。しかし中には発行しなかったり、不正に改ざんしたりして違法に廃棄物を処分する悪徳業者が存在するので、施主としてマニフェストを確認することが重要になります。記入ミスや漏れはないか、きちんと返送されているか、契約内容と相違がないかなどを確認することがポイントです。無用なトラブルを防ぐためには、廃棄物を適切に処分してくれる優良解体業者を選びましょう。