アスベストを含む可能性のある民間建築物の解体工事件数は、2028年頃にピークを迎えるとされています。解体時にアスベストを飛散させないためには、解体前の除去が必要ですが、そもそもアスベストなのかを判断ができないケースも多いでしょう。そこで今回は、アスベストを含む建物や建材の「見分け方」を解説します。
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アスベストとはどういう素材?
アスベストとは、耐火性・耐熱性・防音性などに優れた天然鉱物です。安価で加工しやすい特徴から、建物の屋根や天井、床や壁などの建築材料として広く使用されてきました。しかし、吸引することで石綿肺や肺がんなどの病気を引き起こすため、現在の日本では製造・使用が禁止されています。
アスベストに起因する病気や症状については、こちらの記事で詳しく解説しています。
アスベストを含む建物を見分ける3つのポイント
建物にアスベストが含まれているか見分けるポイントは3つあります。
1.建築時期を確認する
建築時期とアスベストの規制時期を照らし合わせることで、アスベストを含む建物かおおよその判断ができます。
<アスベストの規制時期>
- 1975年:アスベスト含有率5%超の吹付け禁止
- 1995年:アスベスト含有率1%超の吹付け禁止
- 2004年:アスベスト含有率1%超の建材(10品目)禁止
- 2006年:アスベスト含有率0.1%超の製品禁止
以上の規制時期から考えると、1975年より前の建物はもちろん、2006年までの建物にはアスベストが含まれている可能性があるといえます。また、全面的に禁止となった2006年以降の建物は比較的安全であるといえますが、実は含まれているケースもあります。アスベストがあるか正確に見分けるには、専門業者へ依頼する必要があるでしょう。
2.設計図書で調べる
設計図書(設計図・仕様書)に記載された建材の商品名から、アスベストを含有しているか調査できる可能性があります。
各メーカーのホームページに、商品名ごとのアスベスト含有量などが公表されているので確認しましょう。生産終了などで確認できない場合は、国土交通省の「アスベスト含有建材データベース」でも確認できます。
国土交通省:アスベスト含有建材データベース
3.専門業者に調査を依頼する
アスベストを見分ける方法は、専門業者に調査を依頼をすることが最も確実です。建築時期や設計図書でおおよその判断ができたとしても、100%安全とはいえません。老朽化で不安がある箇所や、リフォーム・解体工事を検討しているのであれば、プロに判断してもらいましょう。
アスベストを含む建材の特徴と見分け方
アスベストを含む建材の特徴や見分け方を解説します。
吹付けアスベスト
アスベストにセメントと水を混ぜ、吹付け機を使って壁などに噴射したものです。表面は綿状で柔らかく、針が数cmほど容易に貫通するのが特徴です。建物の柱や梁(はり)、天井や壁などによく使用されています。
吹付けロックウール
ロックウールにセメントやアスベストを混ぜて、壁などに吹き付けたものです。外見の特徴やよく使われる場所は、吹付けアスベストとよく似ています。
吹付けバーミキュライト
バーミキュライトにアスベストを混合し、天井などに吹き付けたものです。表面がざらざらしていて、触ると崩れやすいのが特徴です。機械室や防音室などの天井によく使われています。
屋根用折板断熱材
屋根用の折板の裏側に、接着剤でアスベストを貼り付けた断熱材です。倉庫や車庫、渡り廊下などの屋根に使用されています。「金属折板」の屋根材に使われている可能性が高いです。
煙突用断熱材
煙突内側にも、アスベスト含有の断熱材が使用されていました。コンクリート製煙突のヒビ割れ防止などのために、断熱目的で埋め込まれていることが多いです。
アスベストを放置するとどうなるの?
アスベストを放置した場合、以下のリスクが考えられます。
- 経年劣化で露出・飛散する
- 外壁の高圧洗浄で飛散する
- リフォーム・解体工事で飛散する
一見劣化していないように見えても、経年とともにアスベストは飛散しやすくなります。飛散したアスベストは肉眼では見えないため、知らない間に吸入している恐れがあります。
アスベストの飛散防止対策
アスベストの飛散防止には、以下の対策があります。いずれも飛散を防ぐための工事なので、解体時には除去工事が必要です。
封じ込め工法
封じ込め工法とは、吹付けアスベストの上から薬剤を染み込ませ、造膜材を吹きかけてアスベストの固定・飛散を防止する工事です。
囲い込み工法
囲い込み工法とは、吹付けアスベストの上から板などの材料で覆い、アスベストの損傷・飛散を防ぐ工事です。
アスベスト除去工事の流れ
アスベスト除去工事の進め方を見ていきましょう。飛散防止対策とは違い、アスベストを根本的に取り除く工事です。
1.事前調査
まずは、設計図書や現地確認などの事前調査を行い、アスベストの有無を調べます。
2.届出の提出
作業レベルごとに必要な届出を作成し、提出します。
作業レベル | 工事計画届(労働基準監督署長あて) | 特定粉じん排出等作業届出書(各都道府県知事あて) | 建築物解体等作業届(労働基準監督署長あて) |
レベル1 | 必要 | 必要 | 必要 |
レベル2 | 必要 | 必要 | 必要 |
レベル3 | ー | ー | ー |
作業レベルの詳細は、こちらの記事もあわせてご覧ください。
3.近隣への告知
工事を行う際は、アスベスト飛散防止対策を行っている旨を作業現場に掲示して、近隣住民へお知らせする必要があります。
4.撤去作業
①隔離・排気装置の設置
外部への飛散を防ぐために、養生作業によって工事エリアを隔離します。
②防護具の着用
作業者の吸入や付着を防ぐため、防護服、防じんマスクを着用します。
③飛散防止剤の噴霧
飛散防止剤を吹き付けてアスベストを湿らせることで、除去時の飛散を防止します。
④アスベスト除去
ケレン棒やワイヤーブラシなどを使い、丁寧にアスベストを取り除きます。
⑤掃除機による吸引
真空掃除機を使い、アスベストが残らないよう隅々まで吸引します。
⑥搬出・廃棄
除去したアスベストを二重に袋詰めして、搬出します。特別管理産業廃棄物として処理します。
⑦仕上げ作業
アスベスト除去面の状況に応じて、モルタルで補修するなどの仕上げ作業を行います。
⑧養生撤去・清掃
養生を撤去して清掃を行い、作業完了です。一連の作業がアスベスト除去工事の流れになります。
アスベスト除去工事の費用相場
アスベストの除去工事の費用相場はこちらです。
処理面積 | 除去費用(1平方メートルあたり) |
300平方メートル | 2.0〜8.5万円 |
300〜1,000平方メートル | 1.5〜4.5万円 |
1,000平方メートル以上 | 1.0〜3.0万円 |
引用:国土交通省
たとえば工事面積が100平方メートルだった場合は、200万円〜850万円の費用がかかる計算です。なお、アスベストの工事費用は国の補助金制度を活用できるため、お住まいの地方公共団体に問い合わせてみてください。
アスベスト除去業者の選び方のポイント
アスベスト除去を依頼する業者の選び方のポイントは次のとおりです。
施工業者の義務を守っているか
以下の義務を守れているか確認しましょう。
- アスベスト除去工事の際に「石綿作業主任者」が作業の指揮を行っている
- 「特別管理産業廃棄物管理責任者」がアスベストの廃棄物処理に関する作業を管理している
不明な点は施工業者に直接問い合わせて聞いてみましょう。
工事金額が安すぎないか
工事金額が安い業者には、適切な保護具の着用や飛散養生を行っていない可能性があります。たとえば作業員の防護服や防じんマスクは本来使い捨てですが、使い回している場合もあります。施工費用が相場より極端に安い業者には注意しましょう。
丁寧な説明・詳細な見積もりを提示してくれるか
工事内容や近隣住民への対応をわかりやすく丁寧に説明してくれる業者は信頼できるでしょう。また、現地調査を行った上で、詳細な見積もりを提示してもらえるかも大切です。
2022年4月からアスベストの事前調査結果の報告が義務化
2022年4月からアスベストの事前調査結果の報告が義務化されました。施工業者は、建築物および工作物の解体・改修工事を行う前に、アスベストの有無の調査と報告を行う必要があります。
これらの工事を依頼するときは、見積書に事前調査費用が適切に計上されているかを確認しましょう。
2023年10月からアスベスト事前調査の実施者が資格者等に限定
2023年10月から、建築物の事前調査を実施できるのは有資格者のみに限定されます。有資格者とは、「建築物石綿含有建材調査者」または「日本アスベスト調査診断協会」に登録されている者のことです。
まとめ
アスベストを含む建物・建材の、特徴や見分け方などについて解説しました。やはり、正確に判断するにはプロの調査が必要不可欠です。ご自宅など、アスベストが使われているか心配な人は、信頼できる事業者に調査を依頼してみましょう。