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解体コラム

建設アスベスト訴訟とは?最高裁判決の内容や病気に対する救済制度もご紹介

過去にアスベストを取り扱う仕事に従事していた方で、健康被害に遭われている方は、国の救済制度に基づいて給付金や治療費を受け取れ、損害賠償請求することも可能です。

本記事では、アスベスト(石綿)とは、どういったものなのかという基本から、建設アスベスト訴訟と工場アスベスト訴訟の違いや、利用できる救済制度について詳しく解説していきます。

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アスベストとは?

アスベストは石綿とも呼ばれ、天然の鉱石に含まれる繊維状の鉱物のことです。耐久性、耐熱性、耐薬品性、防音性など様々な優れた性質を持っている上に、カナダや南アフリカを始めとする世界各国で産出されていたことによって、安く入手できたため「奇跡の鉱物」と呼ぶ人もいるほど利便性の高いものでした。

防音材、断熱材、保温材など多くの用途で使用されてきたアスベストですが、特に多く利用されてきたのが屋根材や天井用の板材といった建材としての用途です。天井・壁・床・トイレ・廊下など、ビルや住宅、小学校や公民館といった身近な場所で使用されてきたアスベストですが、1970年代から規制が始まりその後もだんだんと厳しくなっていきます。

規制が始まった理由は、繊維が細かく人が吸い込んでしまうと人体に悪影響を及ぼすことが明らかになってきたからです。

アスベストによって引き起こされる病気

空中に飛散して浮遊しているアスベストを吸い込むと、一部は体外に排出されますが排出されなかったアスベストは体内に滞留します。アスベストは体内に滞留すると長期間にわたって炎症が起こり、肺の組織が傷つけられることによって肺の線維化や肺がんなどの病気を引き起こす場合や、発生した活性酸素によってDNAが損傷し細胞がん化する可能性もあります。

アスベストによって引き起こされる病気は石綿肺、肺がん、中皮腫、良性石綿胸水、びまん性胸膜肥厚の5つです。石綿肺は潜伏期間が約15~20年、肺が線維化してしまう病気で、呼吸困難の症状が出てきます。肺がんは潜伏期間が約15~40年、気管や気管支、肺胞の細胞に起きるがんのことで咳や痰、血痰、息苦しさなどが主な症状です。中皮腫は約20~50年という長い潜伏期間があり、胸膜や腹膜、心膜、精巣鞘膜にできるがんで、息切れ、胸痛、咳、発熱などの症状が現れます。良性石綿胸水は潜伏期間20~40年、アスベストによって胸膜に炎症が生じ胸水がたまる病気で、症状は呼吸困難などの呼吸器障害です。びまん性胸膜肥厚は潜伏期間30~40年、胸膜が慢性的に繊維化し炎症を起こし肥厚した状態、呼吸困難や反復性の胸痛や呼吸器感染などの症状がでます。

建設型アスベスト訴訟の概要

建設型アスベスト訴訟とは、建設作業に従事していた元建設作業員らが、国及び建材メーカーを相手に賠償を求めた裁判です。アスベスト含有建材を用いて作業する際に、適切な規制権限を行使しなかったため、アスベスト含有建材から発生した石綿粉じんに曝露し、石綿関連疾患に罹患又は同疾患により死亡した損害に対して訴訟を行います。アスベストの有害性を知りながら、有害性について作業員になんの警告もせずに、アスベスト含有建材の製造・販売を行い「利益を上げ続けた建材メーカー」と「なんの規制も行わなかった国」両者の責任を問うための訴訟です。今から14年前の2008年に東京地裁で集団訴訟が提起されたことを皮切りに、札幌、仙台、さいたま、横浜、京都、大阪、福岡といった各地方裁判所で、元建設作業員や遺族らによって、同様の提訴がなされました。

その後も全国各地で多数の訴訟が提訴され、高裁レベルでもいくつか判決が出ており、国に対しては「防じんマスクの着用義務付け」「建築現場における適切な警告表示の義務付け」「建材メーカーに対して建材の適切な警告表示義務付け」などを行わなかったこと、建材メーカーには「石綿含有建材への適切な警告表示」を行わなかったことに対して、それぞれ責任が認められています。

令和3年5月17日最高裁判決について

13年前から争われている建設アスベスト集団訴訟について、初めて最高裁が国や建材メーカーの責任を認める判決をしたのが、令和3年5月17日でした。高裁判決で認められていた屋外作業についての責任は認められなかったものの、国が防じんマスクの直用義務付けなどの適切な規制権限の行使を怠ったとして国に責任があることを認め、一部建材メーカーについても、建材の警告表示を怠った責任について最高裁判決において認めたのです。

この判決を受けて翌月の令和3年6月9日に「特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律」が成立したことによって、建設アスベスト被害を受けた人々への救済が大きく前進しました。

工場型アスベスト訴訟との違いとは?

アスベスト訴訟はおおまかに2つの種類に分類することができます。一つは先ほどから説明してきた、アスベスト含有建材を用いた建設現場で建設作業に従事していた方が、国と建材メーカーに対して賠償を求める建設型アスベスト訴訟です。

もう一つは、アスベスト工場で作業に従事していた方が、国に対して賠償を求める工場型アスベスト訴訟です。工場型アスベスト訴訟は、相当量のアスベスト粉塵をばく露しアスベスト関連疾患を罹患することになった、アスベストを製造していた工場での作業に従事していた方が国や建材メーカーに対して行った訴訟です。

明確な違いは働いていた環境で、アスベストを製造する工場で働いていた方の訴訟を工場型アスベスト訴訟、建設現場での作業に従事していた方の訴訟を建設型アスベスト訴訟といいます。

アスベストが原因の病気に対する救済制度

アスベストによる健康被害を受けた場合は、労災保険による支払いを受けられない人を対象とした、アスベスト健康被害救済制度を利用して給付金の支払いを受けるという方法があります。独立行政法人環境再生保全機構が管轄し、アスベストの健康被害に遭った本人や遺族に対して医療費などの給付金を支給する制度です。

アスベスト健康被害救済給付金

アスベスト健康被害救済制度の指定疾病にかかり、アスベスト健康被害救済制度の認定を受けた場合は、療養中かどうかによって異なる給付金を受けとれる可能性が高いです。指定疾病で療養中の方は、自己負担した医療費全額と、近親者などによる介護費用として毎月10万3,870円の療養手当、指定疾病で療養中の方が救済制度で認定後に死亡したケースでは、葬祭料として19万9,000円、未支給の医療費などで医療費と療養手当の合計金額が、280万円に満たない場合はその差額が救済給付調整金として受け取れます。救済制度の申請前に死亡した場合は、特別遺族弔慰金の280万円と特別葬祭料として19万9,000円が受け取れる可能性があります。

国への損害賠償請求

前述した令和3年6月9日「特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律」が成立し、令和4年1月19日に完全施行されたことによって、アスベスト紛じんにばく露したことで健康被害に遭われた被害者の方々に迅速な賠償を図る旨が述べられました。

要件を満たす対象は、昭和47年10月1日~昭和50年9月30日の期間に石綿の吹付作業に関わる建設作業に従事していた人、昭和50年10月1日~平成16年9月30日まで一定の屋内作業場で行われた作業に関わる建設業務に従事していた人で中皮腫、肺がん、著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚、石綿肺(じん肺管理区分が管理2~4)、良性石綿胸水にかかった、労働者や一人親方・中小事業主(家族従事者等を含む)であることです。

給付金額については症状や状態によって異なりますが、550万円から最高だと1,300万円の給付が受けられます。

まとめ

今回は建設アスベスト訴訟について詳しく解説してきました。飛散したアスベストを吸い込むことで肺に悪い影響を与え健康被害をもたらすアスベストを、悪影響があることを知り得ながら適切な処置を行っていなかったとして、国や建材メーカーの責任を問う働きを長い間行ってきた結果、損害賠償請求や給付金を受け取れる制度が確立されています。

もしアスベストによる健康被害を受けているから調べている、という人がいらしたら一度専門家に相談してみてはいかがでしょうか?

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Writer この記事を書いた人

菊池 哲也 株式会社ACTIVEの代表取締役

岡山県生まれ、岡山在住。解体工事は年間300件以上、アスベスト調査除去も行う解体工事のプロフェッショナルです。創業から30年以上培ってきた豊富な知識と経験で、迅速かつ安心安全でクオリティの高い施工を行っています。岡山で解体工事のことならお気軽にご相談ください。

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