鉄骨造の家屋や建物を解体する場合、「費用相場はどのくらいだろう？」「費用を抑える方法はある？」と気になっている方は多いでしょう。解体費用は建物の構造や立地条件などによって大きく異なります。

この記事では、鉄骨造の解体費用相場について種類・階数・建物別に詳しく解説します。費用を抑えるポイントや高くなってしまう原因も紹介しますので、鉄骨造の家屋や建物の解体を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。

鉄骨造の種類

鉄骨造（S造）は、柱や梁などの建物の骨組みに鉄骨を使用している建造物を指します。同じ鉄骨造でも使用する鉄骨の厚みの違いで「軽量鉄骨造」と「重量鉄骨造」の2種類に分けられます。それぞれの厚みは以下のとおりです。

• 軽量鉄骨造：6mm未満
• 重量鉄骨造：6mm以上

軽量鉄骨造

軽量鉄骨造は、柱や梁が細いので鉄骨の本数などを多くして強度を確保する必要があり、建築可能な間取りがある程度限られることから、戸建てやアパートの低層住宅、小規模店舗、倉庫などに多く用いられています。特徴としては、木造よりも耐震性に優れている点が挙げられます。ハウスメーカーなどが建築するプレハブ住宅の多くは、軽量鉄骨造になります。

重量鉄骨造

重量鉄骨造は、使用する柱や梁が太いので広い空間を確保できることから、戸建て以外にマンションや商業ビルなどに多く採用されています。軽量鉄骨造よりも防音・耐久性に優れている特徴がありますが、その分頑丈になるので取り壊す費用が上がります。

鉄骨造と鉄筋コンクリート造の違い

鉄筋コンクリート造(RC造)は、柱や梁などが鉄筋とコンクリートで構成されている建造物になります。鉄筋をコンクリートで覆っている構造になるため酸化しにくく、鉄骨造よりも耐震性・耐久性・防音性などに優れている特徴があります。一般的に建物の強度は、木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造の順番で上がり、強度が増すにつれて解体に時間がかかります。

鉄骨造の種類別の解体費用相場

ここからは解体費用相場について、鉄骨造の種類別にそれぞれ紹介します。下記の相場は建物本体を解体する費用になります。費用は坪単価で計算可能で、坪単価の相場は建物の構造によって変わります。基本的に、木造よりも壊しにくい鉄骨造や鉄筋コンクリート造の方が高くなる傾向があります。費用は地域差や立地条件、廃棄物の量、解体時期などによって変動しますので、あくまで参考目安としてご覧ください。正確な費用を知りたい方は、業者に見積もりを依頼しましょう。

軽量鉄骨造の費用相場

軽量鉄骨造の費用相場は、約4～5万円/坪になります。一般的に建物本体を取り壊す費用は「坪単価×建物の延べ床面積」で計算するため、軽量鉄骨造の30坪の家を取り壊す場合の目安は、約120～150万円です。

重量鉄骨造の費用相場

重量鉄骨造の場合は、約5～6万円/坪になります。軽量鉄骨造よりも柱や梁が太い構造で取り壊しに時間がかかる分、費用が上がります。

鉄筋コンクリート造の費用相場

鉄筋コンクリート造（RC造）の費用相場は、約6～8万円/坪です。重量鉄骨造よりも頑丈な造りになるため、費用が高くなります。

鉄骨造の階数別の解体費用相場

鉄骨造の1階建て（平家）・2階建て・3階建ての解体費用相場をそれぞれ紹介します。上述したとおり、建物本体を取り壊す費用は「坪単価×建物の延べ床面積」で計算できます。延べ床面積は、建物各階の床面積の合計になります。地下室があれば、解体費用が1階分増える形になるので覚えておきましょう。費用は地域差や立地条件によって変動しますので、参考目安としてご覧ください。

1階建て（平家）の場合の費用相場

鉄骨造の坪単価が約4～6万円であれば、30坪の1階建て（平家）の建物本体を取り壊す費用は、約120〜180万円が目安になります。坪数が同じでも、2階建てよりも1階建ての方が基礎や屋根の面積が広くなり解体に時間がかかるため、費用が高くなる傾向にあります。

2階建ての場合の費用相場

2階建ての場合は、1階と2階の床面積の合計が延べ床面積になります。例えば1階の床面積が20坪で、2階の床面積が10坪の場合、延べ床面積は「30坪」と計算できます。また、ベランダやバルコニーは広さによって延べ床面積に含まれるかどうかが変わり、吹き抜けや出窓などの床がない部分は床面積に含まれないので覚えておきましょう。

3階建ての場合の費用相場

3階建ての場合は1階・2階・3階の床面積の合計が延べ床面積になるので、1階が20坪、2階・3階がそれぞれ10坪の場合、延べ床面積は「40坪」と計算できます。3階建ては、2階建てよりも頑丈な作りになっているので解体に手間がかかり、割高になる傾向があります。

鉄骨造の建物別解体費用相場

鉄骨造の建物は戸建て以外にもいろいろあります。ここからは、解体費用の相場を建物別にそれぞれ紹介します。記載している坪単価は、鉄骨造の建物そのものを取り壊す費用です。建物の状態や立地条件などによって変わりますので、詳しい費用は業者からの見積もりで確認しましょう。またアスベスト除去などが必要になる場合は、別途費用がかかります。

小屋・納屋・倉庫

小屋・納屋・倉庫を解体する場合の費用相場は、約2～5万円/坪になります。小屋などは家よりも小さいため自分で解体しようと思う方もいるかもしれませんが、安全面など考慮するなら基本的にはプロの業者にお願いした方が賢明です。

マンション・アパート

マンション・アパートの場合は、約6〜7万円/坪です。1階建てか2階建てかなどによって異なりますが、一般的に1階建ての方が解体費用は高くなります。

工場

工場の場合、約5万円前後/坪になります。工場は一般的な建物と比べて、規模が大きく頑丈な構造になるので、豊富な施工実績と高い技術力がある解体業者を選ぶことが重要になります。アスベストが使用されている場合は、除去費用が発生するので注意が必要です。

車庫

車庫の解体は、約4〜5万円/坪が相場になります。豪雪地帯の車庫の場合、雪の重みに耐えられる強度がある構造で取り壊しに手間がかかる分、費用が高くなる傾向があります。また解体作業は家屋と同じく、足場や養生シートの設置が必要です。

ビル

ビルの解体相場は、約4〜5万円/坪です。工事で発生した鉄骨は鉄くずになり、産業廃棄物として処理されます。

鉄骨造の解体費用を抑える5つのポイント

解体費用を抑える5つのポイントを紹介します。少しでもコストを削減するためにチェックしておきましょう。

建て替えの場合は分離発注を行う

「分離発注」とは、家を建て替える際に行う解体工事と建て替え工事を別々の業者に頼むことを言います。解体工事は建築を請け負っているハウスメーカーや工務店などに依頼すると自社でできないケースが多く、下請けの解体業者に依頼する形になります。施主としては一括して任せられるメリットはありますが、余分な中間マージンが発生してしまいます。費用を抑えるなら、施主が直接解体業者を探す「分離発注」がおすすめです。

家財の処分を自分で行う

家具や家電などの家財の処分は解体業者に依頼することも可能ですが、産業廃棄物として処理されてしまうため割高になります。不用品は粗大ゴミやリサイクルに出すなどして、可能な範囲で自分で処分しておくとコストを削減できます。

複数の解体業者に見積もりを依頼する

同じ工事でも解体業者ごとの価格設定が異なるため、費用に差が出ます。複数の業者から見積もりをもらうことで比較検討ができ、価格と内容が適正かどうか見極められます。必ず2〜3社以上の複数の業者に見積もりを依頼しましょう。また業者を選ぶ際は金額の安さだけで選ばず、見積もりの内訳をきちんと確認した上で、安心して任せられる優良業者を選ぶことが大切です。

補助金を利用する

自治体によっては、老朽化した空き家の倒壊を防ぐ目的などで家の解体に関する補助金制度を設けているケースがあります。補助金の名称や適用条件、金額などは自治体ごとで異なります。活用できれば費用の負担を減らせますので、まずは該当する地域に補助金制度があるかどうか自治体のホームページなどで確認してみると良いでしょう。地域に密着している解体業者であれば、補助金制度を把握している可能性があるので相談してみるのもおすすめです。

建物滅失登記を自分で行う

建物を取り壊したあとは、1ヶ月以内に建物がなくなったことを登録する「建物滅失登記」の手続きをしなければいけません。手続きは土地家屋調査士に代行してもらえますが、手数料として4〜5万円ほどかかります。少しでも費用を節約するなら、自分で手続きすることを検討してみても良いでしょう。

鉄骨造の解体費用が高くなってしまう6つの原因

解体費用が高くなってしまう原因は主に6つありますので、あらかじめ把握しておきましょう。

解体工事中に地中埋設物が見つかる

工事中に、コンクリートガラの廃棄物や井戸などの地中埋設物が見つかるケースがあります。そのまま残してしまうと、新築する際の基礎の障害になったり、土地売却時のトラブルになったりするリスクがあるため撤去が必要です。地中埋設物は建物解体後でないと存在の有無が分からないため、見積もりに含まれていないのが一般的です。予想外の追加費用に慌てないためには、あらかじめ地中埋設物が出てきた場合の撤去費用はいくらくらいかかるのか業者に確認しておくと良いでしょう。

近隣住宅との距離が近い

近隣住宅との距離が近い場合、工事の振動で建物にヒビや亀裂が入るなどの被害を与えてしまう可能性があります。被害を発生させないためには重機を使わずに手作業で慎重に進めるなどの対応が必要ですが、その分時間と人件費がかかるので費用が割高になります。

閑静な住宅街に建物がある

工事は騒音規制法に基づいて作業しなければならないため、閑静な住宅街の現場の場合、適切な防音対策が必要になります。具体的な対策として、防音シートを設置したり、低騒音型の重機を使用したり、手作業で丁寧に進めたりなどが挙げられますが、設置費用や手間がかかる分、費用が高くなります。

大型重機が使えない場所に建物がある

狭い現場や住宅密集地の場合は大型重機が搬入できないため、小型の重機で対応したり、手作業で進めたりしなければいけません。大型重機よりも時間や人員が必要になるので、費用が上がる傾向にあります。

アスベストが使用されている

建物にアスベストが使われていた場合、除去費用が発生します。アスベストは人体に悪影響を及ぼす発ガン性のある物質のため現在は使用が禁止されていますが、古い建物の場合はアスベストが見つかる可能性があるので注意が必要です。アスベスト除去作業は手間と時間がかかるため、高騰する原因になります。

建物以外の解体工事も行う

ブロック塀やカーポート、倉庫、庭木などの建物以外の設備を解体・撤去する場合、「付帯工事費」が別途発生します。解体・撤去するものが多ければ多いほど費用が高くなります。業者に見積もりを依頼した際は必ず現地調査をしてもらい、それぞれいくらくらい費用がかかるのか確認してくことが大切です。庭木などの自分で対応できるものは、あらかじめ処分しておくと良いでしょう。

まとめ

鉄骨造（S造）は、柱や梁などの建物の骨組みに鉄骨を使用している建物のことで、木造よりも耐震性に優れている特徴があります。鉄骨造は使用する鉄骨の厚みの差により、「軽量鉄骨造」と「重量鉄骨造」の2種類に分けられます。建物本体の解体費用は、軽量鉄骨造で約4～5万円/坪、重量鉄骨造で約5～6万円/坪です。その他、付帯工事費や廃棄物処理費、養生費などが必要になります。工事にかかる費用は、解体業者や地域差、立地条件などによって変わりますので、複数の業者に見積もりを依頼して、価格や内容を比較検討することが大切です。解体費用の相場や費用を抑えるポイントを理解した上で、解体工事を行いましょう。