建物の解体工事をする際は、アスベストの事前調査が必須であり、場合によっては定性分析をする必要があります。ところが、定性分析がどのようなものかを知らない人も多いのではないでしょうか。アスベストは人体に悪影響を及ぼすリスクがあるため、依頼主も定性分析の理解を深めておくことが大切です。
そこで今回は、アスベストの定性分析の必要性や費用を解説します。調査の流れや依頼先の選び方もまとめたので、健康被害や近隣トラブルを起こさないためにも、ぜひ参考にしてみてください。
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アスベストの定性分析とは?
アスベストの定性分析とは、アスベストが含有しているか(0.1%を超えて含有しているか)を調べる分析です。一般的に定性分析には、厚生労働省が定めた「偏光顕微鏡法」と「X線回折分析法と位相差分散顕微鏡法の併用」の2つの方法があります。
分析方法 | 内容 | 日本工業規格 |
偏光顕微鏡法 | 偏光と呼ばれる光を試料に当て、色の変化や光の屈折を見る | JIS A 1481-1 |
X線回折分析法 | 試料にX線を照射し、X線の反応を見る | JIS A 1481-2 |
位相差分散顕微鏡法 | 特殊な液剤に浸し、顕微鏡で色の変化を見る | JIS A 1481-2 |
偏光顕微鏡法は短時間かつ低コストで検査できる反面、人の目に頼る方法であるため、高い判断力や知識が必要とされます。
一方、X線回折分析法と位相差分散顕微鏡法を併用する分析方法は、偏光顕微鏡法と比べるとそこまで高い技術力や知識を必要としません。しかし、判定まで時間がかかり、費用も高くなる傾向があります。
アスベストの定性分析の必要性
定性分析は、アスベストの有無を明らかにするために行います。アスベストが含まれているかを目視だけで明確に判定するのが難しいためです。
なお、アスベストの飛散繊維を吸い込んでしまうと、肺がんや悪性中皮腫などの健康被害につながる可能性があります。そのため、解体工事やリフォームをする前に、専門業者に調査・分析を依頼する必要があるのです。
アスベストによって引き起こされる病気や危険性は、こちらの記事で詳しく解説しています。
https://active-okayama.com/asbestos_illness/
アスベストの定性分析と定量分析の違い
アスベストの分析方法には、定性分析の他に定量分析があります。試料を採取して分析する点は同じですが、アスベストの有無を調べる定性分析に対し、定量分析では含有量を調べます。
なお「アスベストが含まれていない」と判断できれば、含有量を調べる必要がないため、先に定性分析を実施するのが一般的です。どのくらい含有されているかを調べたい場合は、定量分析まで実施します。
アスベストの定性分析にかかる費用
アスベストの定性分析には、検体ごとに20,000円前後かかるのが一般的です。検体数が多かったり、定量分析まで合わせて実施したりする場合は、その分費用が高くなります。
なお、偏光顕微鏡法よりも、X線回折分析法と位相差分散顕微鏡法を併用する分析方法の方が費用は高い傾向があります。
アスベストの調査・分析業者や条件によって金額に違いがあるため、事前に問い合わせるのがよいでしょう。
アスベストの調査・分析の流れ
建物の解体工事をする際は、大気汚染防止法により事前にアスベストの調査をするように義務付けられています。アスベストの調査は、書面調査から報告書の作成まで専門業者に一貫して任せるのが一般的です。
ここからは、アスベストの調査・分析の流れを見ていきましょう。
書面調査
まずは、建物の設計図書(設計図・仕様書)に記載された建材や工法から、アスベストを含有しているかを調べます。
あらかじめ調査対象である建物の情報を把握しておくと、現地調査を効率的に進められます。アスベストを含む建材の見落としを防ぐ効果もあるため、現地に向かう前に書面での調査が必須です。
書面調査でアスベストの含有が明らかになった場合は、そのまま除去工事に移ることもあります。
現地調査
アスベストの使用状況を判定するためには、書面調査だけでなく現地での目視調査も欠かせません。必ずしも設計図書に建物の現状すべてが記載されているとは限らないためです。
なお、現地調査では「設計図書通りの建材が使われているか」や「設計図書に記載されていない建材はないか」を確認します。
採取・分析
現地調査でアスベストの有無が明らかにならない場合は、含有が想定される箇所の建材の一部を採取します。持ち帰った試料は専門機関にて定性分析や定量分析をします。
目視だけでは見落とす可能性があるので、採取と分析はアスベストの含有を明確にするために重要な工程です。
報告書の作成
調査が完了したら、報告書の作成に移ります。アスベストの有無にかかわらず、調査結果は都道府県等へ報告しなければなりません。
なお、2022年4月1日から以下の条件を満たした場合「アスベスト有無の事前調査結果」を報告することが義務化されました。
- 建築物の解体作業において、対象の床面積の合計が80㎡以上
- 建築物の改造・補修作業、工作物の解体・改造・補修作業の請負代金の合計額が100万円以上
このようにアスベスト調査に対する規制が厳しくなっているのが現状です。
アスベストの調査・分析を依頼する会社の選び方
アスベストは飛散すると健康被害につながるため、さまざまな規制がされています。自身だけでなく近隣住民や作業者の健康を守るには、信頼できる業者に依頼することが大切です。
最後に、アスベストの調査・分析を依頼する会社の選び方を解説します。
適切な料金設定がなされているか
依頼先を決める際は、適切な料金設定がなされているかを必ず確認しましょう。
ほとんどの場合、追加料金がかかる際は事前に相談してくれますが、なかには調査・分析が終わったあとに高額な料金を提示する会社もあります。そのような会社は、依頼主とのコミュニケーションを怠り、重要な説明を省く可能性が高いため、安心して工事を任せられる会社とはいえません。
また、他社と比較して明らかに安すぎる費用を提示してくる会社も、コストカットのために調査や分析の一部を省略している恐れが考えられるので注意が必要です。
報告書の作成実績があるか
依頼先を探すうえで、報告書の作成実績をチェックすることも欠かせません。
先述した通り、アスベストの調査結果は都道府県等に報告するよう義務付けられています。そのため、報告書の作成実績が多い会社であるほど、調査や分析の経験も豊富であるといえるでしょう。
依頼する前にホームページから確認したり、問い合わせたりして、報告書の作成実績を確認してみるのがおすすめです。
資格を保有しているか
アスベストの取り扱いは危険性が高いため、正確に調査や分析をしてくれる会社を選びましょう。そのためには、資格を保有している作業員が在籍しているかを確認してから、依頼先を検討することが大切です。
また、2023年10月1日から事前調査の実施は以下の資格者に限定されることも考慮すると、資格保有者が在籍しているかの確認が必須となるでしょう。いずれの受講資格も実務経験が2~11年の人が対象となります。
- 一般建築物石綿含有建材調査者
- 特定建築物石綿含有建材調査者
- 一戸建て等石綿含有建材調査者
まとめ
定性分析は、アスベストの有無を明らかにするために実施されます。アスベストの含有は、図面調査や現地調査だけでは判定しきれないことが多く、偏光顕微鏡法やX線回折分析法、位相差分散顕微鏡法を用いて明確にします。
なお、アスベストに関する規制は厳しくなっているため、依頼主も事前調査の流れを知っておくことが大切です。健康被害や近隣トラブルを起こさないためにも、信頼できる専門業者に依頼しましょう。